精神看護学のススメ

看護系大学教員(精神看護学)の備忘録.

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統合失調症の症状・治療・看護

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みなさんどうも, なるとんです.

みなさんがよく知る精神疾患の一つに「統合失調症」があると思います. 

 

実際, 罹患率は100人に1人と少なくなく, 誰にでも起こりうる精神疾患であり, 思春期から青年期に発症することが多いと言われています. 

 

今回は, そんな統合失調症について, どんな症状が出現するのか, 罹患したらどのような治療が行われるのか, 看護師はどのように関わるのかなどをまとめています. 

 

今回の記事は, 以下のような人におすすめです.

  • 精神科で働き始めたばかりの看護師さん
  • 精神科や精神疾患に興味を持っている人
  • 実習に向けて勉強してるけど, 何がポイントなのかわからない看護学生さん
  • 身近な人が統合失調症に罹患した方

少しでも参考になれば幸いです. 

それではさっそくはじめていきましょう!

 

統合失調症の概要

統合失調症は, 何らかの生物学的な脆弱性と環境ストレス(特に対人関係)が重なって発症し, 脳の様々な働き(気持ちや行動)がまとまりにくくなる精神疾患です.

 

特徴的な症状として, 幻覚や妄想を呈する陽性症状, 意欲低下や引きこもりなどの陰性症状, 注意集中困難や遂行機能障害などの認知機能障害があります. これらの症状は, 経過とともに変化していきます. 

 

また, 統合失調症は症状の現れ方や経過により大きく3つに分類されます(図1).

  • 幻覚や妄想が中心の「妄想型
  • 意欲低下や感情の平板化が中心の「破瓜型(解体型)
  • 緊張や奇妙な行動が中心の「緊張型

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図1. 統合失調症の分類

長い治療やリハビリが必要な疾患ですが, 包括的な治療や支援で回復していくケースや, 疾患自体が軽症化してきているとも言われています. 

 

統合失調症の病因と治療

実はこの統合失調症の詳細な病因はいまだ不明なのです. しかし, 胎生期の神経発達障害を基とする生得的な素因に環境要因が複雑に関与するというストレスモデル-脆弱性-対処技能が病態の基盤にあると言われています. 

 

また, 思春期以降に脳の情報処理過程が複雑になると, ドパミン神経系の機能亢進やグルタミン酸神経系の機能低下を来し, 特有の精神症状が現れるともされています.

 

統合失調症への治療は, 急性期, 回復期, 慢性期という病期に合わせて, 薬物療法と心理社会的療法を組み合わせて行います(図2).

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図2. 統合失調症の病因と治療

統合失調症への看護

統合失調症への支援は, 各病期(急性期, 回復期, 慢性期)で変わってきます. そのため, 今自分の受け持ち患者さんが, どの病期にあるのかを把握しておくこともとても大切です. 以下より, 各病期における看護について, 簡単に説明していきます. 

 

急性期の看護

急性期は, 統合失調症特有の精神症状である陽性症状が現れ, 積極的な治療が必要となる時期です. 治療は, 陽性症状の軽減, 不安や緊張, 緊迫感の緩和, 安全の確保, 睡眠や栄養などの基本的な生存機能の維持を目的に行われます. そのため, 環境整備や薬物療法の導入が重要となります. 

 

精神運動興奮が著しい場合や, 幻覚妄想状態が激しい場合には, 入院治療が必要となります. 本人が病気を自覚しておらず, 治療に協力的でない場合は, 家族などの同意を得た上での医療保護入院をしてもらうことや, 自傷他害など, 本人や他者へ危害を与えてしまいそうな状況が切迫している場合には, 措置入院という本人の意思とは関係のない入院形態で入院してもらうこともあります. 

 

以上のような対応は, 本人のために行われることではありますが, 一時的とはいえ本人にとってかなりの苦痛を与えるものになることは想像できますね. そのような状況で入院してくる患者さんたちに, もっとも接する頻度が高いのは看護師です. そのため, 患者さんたちの思いは受け止めつつ, 患者さん自身に病気のことを理解してもらい, 治療に対して積極的になってもらえるよう働きかけることも看護師の重要な役割だと言えます. 

 

では, 具体的にどのような看護を行うのか, 急性期に行う看護のポイントを図3にまとめてみました. 

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図3. 急性期の看護

まずは, 患者さんの安全を確保すること, 先ほども伝えましたように, 入院したての患者さんはとても不安です. 物理的にも精神的にも, 安全で安心できる環境を整える必要があります. 場合によっては保護室(隔離)の使用を検討することも大切です. 

 

その後は, 薬物治療の効果を確認したり, 不足しているセルフケア(日常生活で困ること)について援助を行っていきます. 

 

回復期の看護

回復期は, 陽性症状が軽減し, 現実検討能力が回復してくる時期です. この時期は, こころとからだの両方で疲弊がめだちます. また, 自分の身に起きたことが精神疾患の症状であったことにも気づき始め, 治療の必要性に納得してくれる反面, 精神疾患になってしまったことや, その症状のために起こしてしまったさまざまな事象に対して, 抑うつ感や絶望感, 今後の生活への不安が生じやすくなります. 

 

回復期の治療では, 上記のような疾患へのさまざまな思いを理解した上で支え, 的確な情報を基に心理教育(疾患に関する知識の提供)を導入し, 治療への動機づけを高めます. また, 患者本人のみでなく, 家族にも心理養育を行い, 家族にも疾患の理解を促すことが大切になってきます. さらに, 薬物療法の副作用の出現にも注意が必要であり, こころとからだの両方について支援が必要な時期と言えます. 

 

回復期の看護のポイントも図4にまとめてみました. 

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図4. 回復期の看護

先述の説明と重なる部分もありますが, 急性期を脱し, それまでの陽性症状による疲弊が出現してくる時期なので, まずは疲れを癒してもらえるように関わっていきます.

 

その後, 本人の様子を見ながら, 心理教育などを導入し, 疾患への理解を促すとともに, 治療への動機づけを高めます. 

 

治療に対して前向きに考えてもらえるよう, 本人の希望や不安をしっかりと聞き, 今後の生活について社会資源の活用など, 具体的な情報提供を行い, 少しずつでも本人の今後の生活への不安が軽減されるように支援していきます. 

 

慢性期の看護

この時期の特徴は, 軽症, 重症などさまざまな認知機能障害や生活障害が出現していることです. これらの障害の程度を評価し, その程度や個別性に応じて生活, 社会機能の回復, 増強するためのリハビリテーション社会福祉サービスを導入していきます. 

 

薬物療法も行いますが, 有害作用の観察が必要であり, できるだけ患者さんや家族にとってわかりやすく, 飲みやすい量や内容に調整し, 薬物療法が継続できるようにすることが重要です.

 

デイケア訪問看護を活用して服薬を継続できるように支援したり, ご本人や家族と相談して, 定期的にデポ剤(抗精神病薬持続性注射製剤)を注射するスタイルを導入することもあります. 

 

慢性期の統合失調症への看護についてもポイントをまとめました(図5).

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図5. 慢性期の看護

この時期の支援では, 治療が継続できるように支援することがとても大切です. 治療を継続することで, 再発を予防することができます. 治療が継続できるようにした上で, 地域生活をイメージし, 安心して退院できるように支援していきます. 

 

まとめ

今回は, 統合失調症の症状、治療、看護について説明しました.

 

症状や治療については, 割と参考書やネットに載っているので, 僕の記事では看護のポイントをメインにまとめてみました. 

 

今回まとめたことは, 看護のポイントといいつつも, 看護師だけで行えるものではありません. ご本人や家族の希望を聴いたうえで, 医師や薬剤師, 精神保健福祉士, 作業療法士, 訪問看護師, 地域で関わる職種の方々など, さまざまな職種と連携して行います. 

 

そのため, 日頃から多職種連携を意識し, いろんな職種の方とコミュニケーションを取っておくことも大切なことかもしれませんね. 

 

最後に, 最近では, 治療が発展してきたことで, 統合失調症は早期に発見し, 受診することができれば, 外来で治療を完結させることも可能な疾患となってきていますので, 自分や身近な人で疾患が疑われる場合は, 早めに受診することをおすすめします. 

 

今後も精神看護に関するさまざまな情報を発信をしていきますので, 是非読んでいただきたいと思います.

それでは, また次回の投稿でお会いしましょう! 

 

参考文献

1. 新体系看護学全書 精神看護学2 精神障害を持つ人の看護. メヂカルフレンド社

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2. 全人的視点にもとづく精神看護過程. 医歯薬出版株式会社

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3. 看護実践のための根拠が分かる精神看護技術. メヂカルフレンド社

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