精神看護学のすすめ

An Invitation to Psychiatric Nursing

その人の「健康的な部分」に目を向けるということ-ストレングスモデルの考え方-

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支援や看護の場面では、どうしても「問題点」や「できていないこと」に目が向きがちです。

しかし今回は、その視点を少し変えてみたいと思います。

その人の問題点に焦点を当てるのではなく、「健康的な部分」や「その人が本来もっている力」に目を向ける。

そのような考え方が、ストレングスモデルです。

ストレングスとは「強み」と訳されることが多い言葉ですが、ここで言う強みとは、単なる長所や得意なことだけを指すものではありません。

その人が自分らしく生きるために、夢や希望を叶えるために役立つものすべてがストレングスに含まれます。

ストレングスモデルの大きな特徴は、「問題を修正する」ことを中心に据えるのではなく、その人が「在りたい自分」でいるための健康的な側面に目を向けて支援を行う点にあります。

これは、楽観的に物事を見るという意味ではありません。現実を見据えたうえで、それでもなお、その人の中にある力を信じるという姿勢です。

ここでひとつ、注意しておきたいことがあります。

ストレングスモデルは、単に「いいところを見ましょう」「ポジティブに考えましょう」という考え方ではありません。

ストレングスは、一般的にいくつかのカテゴリーに分類して考えられます。

たとえば、能力や特技、関心や熱望、環境や人間関係、過去の経験などです。

これらのカテゴリーを見てみると分かるように、ストレングスは表面をなぞるだけでは見えてきません。

その人のことをよく理解しようとしなければ、たどり着くことは難しいものです。

特技や能力は、一見すると分かりやすいストレングスのように思えるかもしれません。
しかし、実際には話をしてみなければ、その人がどんなことを得意とし、どんな場面で力を発揮できるのかは分かりません。

関心や熱望も同様です。

「何を大切にしているのか」「どんなことを望んでいるのか」「どんな未来を思い描いているのか」。

これらは、その人が夢や希望に向かって進むための大きな原動力になりますが、本人の語りに耳を傾けなければ見えてこないものです。

つまり、ストレングスを理解するということは、その人を深く理解することとほぼ同じ意味を持っていると言えるでしょう。

精神科看護の領域でストレングスモデルを活用する際には、いくつかの大切な原則があります。

細かな表現はさまざまですが、根底に流れている考え方は共通しています。

たとえば、

  • 問題よりも可能性を信じること
  • 強制ではなく、本人の選択を尊重すること
  • 生活の質や目標は、本人自身が決めるという前提に立つこと

このような姿勢をもって関わることが、ストレングスモデルの基本です。

人は誰しも、「この方がいいのではないか」「こうした方が楽になるのではないか」と、良かれと思って自分の価値観を相手に重ねてしまうことがあります。

そこに悪意があるわけではありません。むしろ、相手を思う気持ちから出てくる行動であることの方が多いでしょう。

しかし、その「善意」が、相手にとっては負担になってしまうこともあります。

相手の人生を生きるのは、あくまでもその人自身です。

夢や希望は、外から与えられるものではなく、その人の中にあります。

であるならば、その夢や希望を叶えるために必要な力、つまりストレングスも、すでにその人の中に存在しているはずです。

支援する側にできることは、そのストレングスを「与える」ことではありません。

その人自身が、自分の中にある力に気づいていけるよう、そっと寄り添うことなのだと思います。

人の悪いところや足りないところは、意識しなくても目に入りやすいものです。

一方で、良いところや可能性を見つけようとすると、驚くほど難しく感じることがあります。

それは、あなたの見方が間違っているからでも、努力が足りないからでもありません。

本当に、それほど難しいことなのです。

だからこそ、ストレングスモデルという考え方には意味があります。

カテゴリーを手がかりにしながら見ていくと、「何もない人」よりも、「すでに多くのものを持っている人」の方が、実は圧倒的に多いことに気づかされます。

今回紹介したストレングスモデルについて、すべてを完璧に理解する必要はありません。

ただ、「問題だけでなく、その人の中にある力にも目を向けてみよう」という視点を、心の片隅に置いてもらえたら嬉しく思います。

それだけでも、関わり方や見える景色は、きっと少しずつ変わっていくはずです。

 

【参考文献】

萱間真美『リカバリー・退院支援・地域連携のためのストレングスモデル実践活用術』

 

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