精神看護学のすすめ

An Invitation to Psychiatric Nursing

コミュニケーションがうまくいかないあなたへ―「自己一致」という視点―

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このような悩みを抱えている方は、少なくないのではないでしょうか?

  • 夫婦の会話がうまくいかない
  • 友だちが何を考えているのかわからない
  • 職場の人との関係がなんだか苦しい

人と関わる以上、コミュニケーションの問題は誰にとっても身近なテーマです。そして多くの人が、「もっとコミュニケーションスキルを上げたい」と感じた経験があると思います。

では、コミュニケーションにつまずいているとき、あなたは相手にどのような気持ちを抱き、どのような言葉や態度で反応しているでしょうか。
そのときの「気持ち」と「反応」は、本当に一致しているでしょうか。

今回は、コミュニケーションスキルを高めるための一つの考え方として、「自己一致」という視点を紹介したいと思います。

自己一致とは何か

自己一致とは、自分の中に生じた感情にきちんと気づき、その感情を否定したり抑え込んだりするのではなく、相手との関係性への配慮を加えたうえで、率直に伝えていく姿勢のことを指します。

ポイントは、「思ったことをそのままぶつける」ことではありません。

あくまでも、

  • その場で自分が感じた本来の感情
  • 相手に伝わりそうな感情
  • 伝えても関係を損ねにくい表現

これらを行き来しながら、言葉を選んでいくというプロセスです。

感情を完全に抑圧するわけでもなく、感情のままに相手を傷つけるわけでもない。その中間にある、非常に繊細で大切な姿勢だと言えるでしょう。

 

自己一致ができないとどうなるのか

自己一致がうまくいかないと、コミュニケーションは表面的なものになりがちです。

本音を飲み込んだまま当たり障りのない言葉だけを返していると、「何を考えているのかわからない人」になってしまいます。

一方で、自分自身も「本当はどう感じているのか」がわからなくなっていきます。
特に、我慢しがちな人ほど、自分の感情を抑え続けることで、気づかないうちに心が疲弊していきます。

なんとなく苦しい、モヤモヤする、イライラが溜まる。
そうした状態が続く背景には、「感情と反応の不一致」が隠れていることが少なくありません。

 

まずは自分の感情に気づくことから

自己一致の第一歩は、とてもシンプルです。

「自分はいま、どんな感情を抱いているのか」に気づくことです。

  • 嬉しかったのか、悲しかったのか。
  • 楽しかったのか、悔しかったのか。
  • 安心したのか、苦しかったのか。
  • 寂しかったのか、腹立たしかったのか。

感情には正解も不正解もありません。

まずは評価せずに、「そう感じている自分」に気づくことが大切です。

 

ポジティブな感情は、そのまま伝えてよい

嬉しい、楽しい、ありがたい。

こうしたポジティブな感情は、基本的にはそのまま相手に伝えても問題になることは少ないでしょう。

「嬉しい」「楽しい」と言われて嫌な気持ちになる人は、あまりいません。
むしろ、相手との関係を温かくする力を持っています。

 

難しいのはネガティブな感情

問題になるのは、怒り、悲しみ、不安、失望といったネガティブな感情です。
これらを感情のまま伝えてしまうと、関係を大きく損なってしまうことがあります。

かといって、我慢し続ければ、自分の心が苦しくなります。
では、どうすればよいのでしょうか。

ここで大切になるのが、「伝えても関係を壊しにくい言葉」に置き換えるという視点です。

たとえば、

「なんでそんなことするの?」という怒りは、

「少し悲しい気持ちになった」と言い換えられるかもしれません。

「どうせ私のことなんて考えてない」という思いは、

「もう少し気持ちを聞いてもらえると嬉しい」という表現に変えられるかもしれません。

これは簡単なことではありません。

最初は戸惑いますし、うまく言葉にできないことも多いでしょう。

しかし、意識して繰り返すうちに、少しずつ感情と言葉をつなげられるようになっていきます。

 

言葉を選ぶことは、逃げではない

私自身、妻や子どもたち、そして学生さんたちと関わる中で、「どう伝えればよいか」をかなり考えます。

瞬間的に言葉を発するのではなく、一度立ち止まり、表現を選ぶことも少なくありません。

その分、口に出した言葉には重みが生まれ、比較的しっかりと受け止めてもらえる感覚があります。

それは、自分の感情と反応が一致しているからなのだと思います。

 

すべての関係がうまくいくわけではない

もちろん、この「自己一致」という考え方ですべての人間関係が解決するわけではありません。場合によっては、距離を取ったほうがよい関係や、関係を終わらせたほうが自分を守れることもあります。

自己一致は、「我慢し続けるための技術」ではありません。

自分の感情を大切にしながら、人と関わるための一つの選択肢です。

もともとは、看護師と患者さんとの信頼関係を築くために学んだ考え方ですが、日常生活のさまざまな場面にも応用できると感じています。

コミュニケーションに悩んだときの、一つのヒントとして、「自己一致」という視点を知ってもらえたら嬉しいです。

 

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