
私たちは日々、さまざまなストレスにさらされながら生活しています。
仕事、人間関係、家庭のこと、将来への不安など、完全にストレスから解放されることは現実的ではありません。
そんな中で、近年よく耳にするようになった概念が「レジリエンス」です。
ストレスと対をなす概念として紹介されることも多く、メンタルヘルスの分野では非常に重要なキーワードの一つです。
レジリエンスという言葉を聞いたことはあっても、「結局どういう意味なのか」「生まれつきの性格の話なのでは?」と感じている人も多いのではないでしょうか。
今回は、このレジリエンスについて、できるだけわかりやすく解説していきます。
- レジリエンスはもともと物理学の言葉
- 心理学におけるレジリエンスの意味
- レジリエンスには個人差がある
- レジリエンスは鍛えることができる
- 支援者の関わりがレジリエンスを支える
- レジリエンスを知ることの意味
レジリエンスはもともと物理学の言葉
実は、「ストレス」も「レジリエンス」も、もともとは物理学の分野で使われていた言葉です。
物理学におけるストレスとは、外部から力や刺激を受けたときに物体の内部に生じる緊張状態を指します。
一方、レジリエンスは「跳ね返り」「弾力」「元に戻る力」といった意味を持つ言葉です。
この二つの概念が心理学の分野に取り入れられ、人のこころの働きを説明するために使われるようになりました。
つまり、私たちが感じる心理的ストレスと、そこから回復しようとする力を表す言葉として定着してきたのです。
心理学におけるレジリエンスの意味
心理学の分野では、レジリエンスは次のように定義されることが多いです。
- 困難な状況に陥っても、それを乗り越えていく力
- 逆境の中にあっても、比較的良好な結果をもたらすことができる心のしなやかさ
簡単に言えば、「人が本来持っている回復しようとする力」と言えるでしょう。
大きなストレスやつらい出来事があっても、時間をかけながら少しずつ立ち直っていく力、それがレジリエンスです。
ここで大切なのは、「ストレスを感じないこと」や「落ち込まないこと」ではない、という点です。
落ち込んだり、つらくなったりするのは、人として自然な反応です。
レジリエンスとは、そうした状態から回復していくプロセスそのものを指しています。
レジリエンスには個人差がある
同じような困難に直面しても、前向きに立ち直れる人もいれば、なかなか気持ちを切り替えられない人もいます。
この違いを見て、「あの人はメンタルが強い」「自分は弱い」と感じてしまうこともあるかもしれません。
しかし、レジリエンスには明確な個人差があります。
それは性格だけで決まるものではなく、これまでの経験、周囲の人との関係性、環境など、さまざまな要因が影響しています。
つまり、「レジリエンスが低い=ダメな人」というわけでは決してありません。
むしろ、環境やサポートの有無によって、大きく左右されるものだと考えられています。
レジリエンスは鍛えることができる
ここで、希望の持てる話があります。
アメリカ心理学会によると、レジリエンスは生まれつき決まっているものではなく、トレーニングによって高めることができるとされています。
アメリカ心理学会では、レジリエンスを向上させるための「10の方法」が示されています。
具体的な内容はここでは詳しく触れませんが、特徴的なのは、特別な才能や精神力を求めていない点です。
- 人とのつながりを大切にする
- 現実的な目標を設定する
- 自分では変えられないことと、変えられることを区別する
- 自分自身を大切にする行動をとる
このように、日常生活の中で少し意識を変えるだけでも取り組める内容が多く含まれています。
支援者の関わりがレジリエンスを支える
ストレスへの対処は、本人の努力だけでどうにかなるものではありません。
心身の状態や置かれている状況によっては、自分一人では前を向く余裕すら持てないこともあります。
そんなときに重要になるのが、周囲の支援者の存在です。
家族、友人、職場の同僚、医療・福祉の専門職など、誰かがそばで支えることで、レジリエンスは大きく引き出されます。
支援者が、レジリエンスを高める視点を持って関わることで、「立ち直る力」は本人の中で少しずつ育っていきます。
無理に励ましたり、前向きを押しつけたりする必要はありません。
安心できる関係性そのものが、回復の土台になるのです。
レジリエンスを知ることの意味
レジリエンスについて知ることは、「強くならなければならない」というプレッシャーを与えるためのものではありません。
むしろ、「人は回復する力を持っている」「支え合うことで、その力は引き出される」という視点を持つことに意味があります。
自分自身のこころの健康を守るためにも、そして身の回りの大切な人を支えるためにも、レジリエンスという考え方は知っておいて損のない知識だと言えるでしょう。
困難な状況に直面したとき、少しでも「回復する力はある」と思えること。
それ自体が、レジリエンスを高める第一歩なのかもしれません。
