
今回は「強迫性障害」について解説していきます。
強迫性障害とは、ある考えが頭から離れず、その不安を打ち消すために特定の行為を繰り返してしまい、日常生活に大きな支障をきたしてしまう精神疾患です。
たとえば
「手がひどく汚れているのではないか」
「交差点で誰かをはねてしまったかもしれない」
といった考えが浮かび、それに伴って強い不安が生じます。
その不安を少しでも和らげるために、
「何度も手を洗う」
「交差点に戻って何度も確認する」
といった行為を繰り返すようになります。
このとき頭に浮かぶ不安や考えを強迫観念、それを打ち消すために行われる行為を強迫行為と呼びます。
強迫性障害の大きな特徴は、多くの当事者が「その行為に意味がない」「やりすぎだ」と頭では理解している点です。それでも、不安が強く、やめようとしてもやめられない。そのこと自体が、本人にとって非常につらい体験になります。
強迫性障害の発症要因
強迫性障害は、単一の原因で発症するものではなく、複数の要因が重なり合って発症すると考えられています。
脳の機能の偏りや、神経伝達物質(特にセロトニン)の働きの異常、ホルモンバランスの影響、性格傾向、過去の体験やストレスなど、さまざまな要因が関与すると言われています。
「気にしすぎな性格だから」「心が弱いから起こる病気」というような単純なものではありません。本人の努力や気合いだけでどうにかできるものではない、という点はとても重要です。
強迫性障害の悪循環
強迫性障害では、特徴的な悪循環が生じます。
- ある出来事やきっかけが起こる
- 強迫観念が浮かぶ
- 強い不安を感じる
- 強迫行為を行う
- 一時的に不安が和らぐ
- 再び不安が高まり、3に戻る
この3から6の流れを何度も繰り返すことで、不安と行為がどんどん強化されていきます。行為を行えば一時的に楽になるため、「やらなければもっと不安になる」という学習が成立してしまい、抜け出すことが難しくなります。
強迫性障害の治療
強迫性障害の治療は、主に薬物療法と認知行動療法の二本柱で行われます。
薬物療法
薬物療法では、不安症状の軽減を目的として、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が中心に使用されます。脳内のセロトニン量を調整することで、不安が和らぎ、強迫観念や強迫行為が軽減していくことが期待されます。
効果が十分でない場合には、他の抗精神病薬などが併用されることもあります。
認知行動療法
症状が比較的軽い場合や、小児・思春期の患者さんでは、認知行動療法が優先されることもあります。
なかでも代表的なのが暴露反応妨害法です。これは、不安を引き起こす対象にあえて触れ、その後に行ってしまう強迫行為を我慢する、という治療法です。
たとえば、床に触れたあと、すぐに手を洗わず、数分間我慢してもらうといった形で行われます。不安は一時的に強まりますが、時間の経過とともに自然に低下していく体験を積み重ねることで、「行為をしなくても不安は下がる」という学習を促します。
もちろん、無理やり行うものではありません。本人と十分に話し合い、納得しながら、段階的に進めていくことがとても大切です。
入院が必要となるケースと看護の視点
強迫性障害は、すべての人が入院治療を必要とするわけではありません。症状が非常に強く、日常生活への支障が大きい場合や、家族や周囲の人を巻き込んでしまっている場合などに、入院治療が選択されます。
看護の場面では、入院初期・治療が進んだ時期など、患者さんの状態や治療効果を見ながら関わり方を調整していく必要があります。
まずは信頼関係を築き、病棟で安心して過ごせる環境を整えることが重要です。そのうえで、少しずつ強迫観念にとらわれすぎず、視野を広げられるような関わりを目指していきます。
チームで関わることの重要性
強迫性障害のケアにおいて、とても大切なのがチームで対応を統一することです。
たとえば、強迫行為に対してリミット(行為を行ってよい回数や時間)を設定する場合、看護師や医師によって対応が異なると、患者さんは混乱してしまいます。その結果、不安が高まり、治療がうまく進まなくなることもあります。
治療方針やケアの内容は、必ずチーム内で共有し、一貫した対応ができるようにしておくことが欠かせません。
おわりに
今回は「強迫性障害」について解説してきました。
本当は、私自身の経験や、現場で感じてきたことも書きたかったのですが、今回はここまでとします。また別の機会に触れていければと思います。
この文章が、
少しでも多くの方の理解につながれば嬉しいです。
