精神看護学のすすめ

An Invitation to Psychiatric Nursing

統合失調症の方への看護

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

 

統合失調症は、思考・感情・行動の統合がうまくいかなくなる疾患であり、「現実と自分の内面の境界が揺らぐ」という特徴があります。症状は多様で、幻覚や妄想などの陽性症状、意欲低下や感情表現の乏しさなどの陰性症状、さらに認知機能の低下がみられることもあります。これらの症状は、脳の働きの変化によって生じるものです。看護においては、疾患の特徴を理解しながら、本人が安全に、安心して、その人らしい生活を取り戻せるよう支援することが求められます。

以前、統合失調症について症状と治療と看護についての記事を書きました。

www.narut0n.com

本記事では、さらに看護のポイントについて、ストレングスの視点も踏まえた上で解説していきます。日頃の看護ケアに活かしてもらえると嬉しいです。

 

病状の理解とアセスメント

統合失調症の看護の第一歩は、症状や病状経過の理解です。発症初期や急性期では、幻覚・妄想、不安の高まり、興奮などの陽性症状がみられ、本人は大きな混乱の中にいます。このため、看護師は本人の言動を注意深く観察し、症状の変化を捉える必要があります。

また、陰性症状は一見すると「サボっている」「怠けている」と誤解されやすいですが、脳の働きに関係する症状であり、意欲や感情表現が低下してしまう状態です。

認知機能の低下も生活に大きな影響を与えるため、注意力・記憶力・社会的判断能力などのアセスメントが重要です。

アセスメントでは、

  • 現在の症状と強さ
  • 睡眠や食事など基本的生活状況
  • 薬物治療の状況と副作用
  • 家族関係やサポート体制
  • 本人のストレングス(強み)

以上を全体的に把握し、ケアにつなげていきます。

オレム・アンダーウッドのセルフケア理論やストレングスモデルなどを活用すると本人の今の状態を捉えやすくなります。

 

信頼関係の構築

統合失調症の人は、症状によって他者への不信感が強くなることがあります。特に妄想がある場合、看護師の働きかけが脅威と感じられることもあります。

そのため、無理に症状を否定せず、相手の感じている不安に寄り添い、安心できる環境をつくることが重要です。これがいわゆる「否定も肯定もしない」という対応につながります。

信頼関係を築くためのポイントとしては、

  • 相手のペースに合わせて関わる
  • 約束を守り、予測可能で一貫した態度を示す
  • 否定も肯定もせず、事実に基づいて丁寧に受け止める
  • 「気持ち」にフォーカスする(例:「怖い思いをしているんですね」)
  • 小さな成功体験を一緒に確認し、強みを活かす

などがあります。

特にストレングスの視点は重要です。問題点にばかり目を向けるのではなく、「できている部分」「回復に向けて活かせる本人の資源」を見つけることが、回復意欲につながります。

 

症状への対応

幻覚・妄想への対応

幻覚や妄想は、どんな内容であったとしても本人にとっては事実です。そのため、幻覚や妄想を否定してしまうと、かえって本人の不安を強めることがあります。一方で、妄想の内容に巻き込まれることも避ける必要があります。そのため、「否定も肯定もしない」中立的姿勢で対応しながら、本人の感情に寄り添います。

例えば、幻聴に対しての声掛けとして、「声が聞こえて怖いんですね。辛い気持ちはわかります。私は今ここにいて、あなたを安全に保てるようにしています。」などのように、事実として確認できない内容には加担せず、本人の感じている“怖さ”や“不安”を受け止めることが基本となります。

不安・興奮への対応

急性期には不安が高まりやすく、周囲のさまざまなことが刺激となり、興奮につながることがあります。

  • 環境を静かに整える(刺激を減らす、場合によっては保護室を使用)
  • 必要以上に多くの指示を出さない
  • わかりやすい短い言葉で伝える
  • 視界に入る位置で、ゆっくりと関わる

など、身体的・心理的な安全を確保します。

陰性症状への対応

陰性症状は長く続くため、本人の自己評価が低くなりがちです。

そのため、

  • できている小さな行動を評価する
  • 活動量を急に増やさず、段階的に支援する
  • 生活リズムの改善を図る(睡眠や食事の調整)

などの継続的なサポートが必要となります。

 

薬物療法の支援

統合失調症の治療において、抗精神病薬は重要な役割を持ちます。しかし、副作用もあるため、服薬の継続は本人にとって簡単ではありません。看護師は、副作用の観察や説明、服薬の意義を共有し、本人が納得して治療を継続できるよう支援します。

 

服薬支援のポイント

  • 副作用(錐体外路症状、眠気、体重増加など)の観察
  • 本人の疑問や不安に丁寧に答える
  • 服薬の目的や効果をわかりやすく説明する
  • 生活リズムに合わせた服薬管理の工夫を一緒に考える

「薬を飲み続けられている」という事実は本人の大きなストレングスとして捉え、回復過程の一歩として肯定的に扱うことが大切です。

 

生活の支援とリハビリテーション

統合失調症は回復した後にも、認知機能の低下や意欲の減退が続くことがあります。そのため、再発予防と社会参加を目指した支援が重要です。

生活の支援としては、

  • 生活リズムの調整
  • 食事、清潔、金銭管理などの日常生活行動(ADL・IADL)のサポート
  • ストレスの少ない環境づくり
  • 再発兆候の早期発見(睡眠悪化・引きこもり・イライラなど)

などがあります。

社会復帰への支援としては、デイケア、就労支援、作業療法などが活用されます。看護の役割は、本人が“できる部分”を見つけて伸ばし、再び役割を持てるよう支援することです。ストレングスの視点はこの段階でも非常に重要となります。

 

家族支援

家族は長期にわたり本人を支える重要な存在ですが、同時に大きな負担を抱えることがあります。そのため、家族への支援も重要です。

例えば、

  • 疾患への理解を一緒に深める
  • 家族の不安や疲労に寄り添う
  • 本人との関わり方の情報提供
  • 地域資源(家族会、相談支援、医療機関)につなぐ

などの支援が必要となります。

入院前の本人の状態を見ている家族は、本人に対して否定的な感情を抱きがちです。そのため、本人が入院している間に疎遠になったり、退院に否定的になることがあります。しかし、そんな家族の思いを責めるのではなく、回復のパートナーとして支える視点が重要です。

 

再発予防と地域支援の連携

統合失調症は再発しやすい疾患ですが、早期の兆候に気づくことで重症化を防ぐことができます。

  • 睡眠の乱れ
  • 薬の飲み忘れ
  • イライラや不安の増大
  • 疎外感の訴え

などは再発の早期サインとなることがあります。

地域の訪問看護や相談支援専門員、家族、本人と連携し、支援チームをつくることで、安心して地域生活を送ることができます。

 

まとめ

統合失調症の看護は「症状を見る」だけでなく、「その人全体を理解し、強みを生かして回復を支える」ことが中心となります。信頼関係を丁寧に築き、症状への適切な対応、薬物療法のサポート、生活リハビリ、家族支援、再発予防など、幅広い視点から包括的に支援する必要があります。

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村