みなさんどうも, なるとんです.
僕たち大学の教員は, 教育者であるとともに研究者であるという面も持っています.
研究を通して新たな知見を得, それを世の中に発信することで社会貢献するのです.
この研究を行うために, どうしても必要なもの...実はお金なんですね!
どんなに素晴らしい研究のアイデアも先立つものがなければできません...
そこでこの記事では, 代表的な研究費である科研費を例に研究者がどのように資金調達をしているのか説明したいと思います!
- 将来研究者として働いてみたい人
- 研究者になりたての人
- 研究者と言う職業に興味のある人
以上のような人たちの参考になる内容を記載していますので, 最後までお付き合いください.
【目次】
なぜ研究資金が必要となるのか?
そもそも, どうして研究資金が必要となってくるのかを具体的な例を挙げて説明します.
例えば...
子どものいじめに関する大分県内の小・中・高校の教員の意識について郵送法による無記名自記式質問紙(アンケート)調査をしたい
と考えたとします.
大分県のwebサイトによると, 県内の教職員数は, 小学校が約4500名, 中学校が約2700名, 高校が約2700名で合計9900名だそうです.
できるだけ多くのサンプル数を集めたいので, 小・中・高校の教員全員にアンケート用紙を郵送する場合, それぞれの対象者と対象者の所属する学校長宛てに, 調査依頼文書・承諾書(校長宛て)・同意書(対象者宛て)・アンケート用紙(この用紙の返送をもって同意とすることもあります)・返送用封筒を角2サイズの封筒を準備しなければなりません.
つまり, 印刷費と郵送費がかかります.
簡単にですが, かかる費用を算出してみます...
まず, 印刷費です.
(依頼文書1枚+質問紙8枚)×9900=89,100枚
現在ASKULで, A4用紙をまとめ買いすると, 1000枚入りで1500円ですので, これが90箱必要になりますので, 1500×90=135,000円 となります.
次に, 郵送費です.
送るときは, 角2封筒の郵送費が50g以下で, 120円×9900名=1,188,000となります.
返送用封筒の郵送費が25g以上50g以下で1, 92円×9900名=910,800です.
印刷費と郵送費を合計すると...
な, な, な, なんと!2,233,800円!!!
さらに, アンケートが返ってきた後のデータ入力を業者に依頼する場合(教育もしているので自分で打ち込んでいたらとてもじゃないけど間に合いません...)や, 論文を投稿するための費用なども必要となります.
もちろん, 所属している研究機関や大学からもある程度の研究費は支給されますが, その金額は助教だと20万円程度です(施設によります).
もしも, 研究費がとれなかった場合は, 対象者の人数を絞るなどの工夫を凝らして, なんとか自身の研究費の範囲で調査ができるように工夫しなければなりません.
⇩こんな状況になってしまうわけです...
少額の研究費の範囲内であっても, デザインがしっかりできていれば素晴らしい研究を行うことはできますが, 本当に自分のしたい研究を行い, 社会に貢献できるような結果を得るためにも, 研究費の獲得は重要なのです.
科研費とは?
正式名称は, 「科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金/科学研究費補助金)」といい, 日本学術振興会(通称:学振)という, 機関が公募している競争的研究資金のことです.
日本国内の研究者の間では, 最も有名な研究資金の一つじゃないでしょうか?
学振のwebサイトでは...
科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金/科学研究費補助金)は、人文学、社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり、基礎から応用までのあらゆる「学術研究」(研究者の自由な発想に基づく研究)を格段に発展させることを目的とする「競争的研究資金」であり、ピアレビューによる審査を経て、独創的・先駆的な研究に対する助成を行うものです。
以上のように科研費について説明がされています.
つまり, 社会にとって有意義な研究を行おうとしている研究者に対して, 研究資金を提供してくれるということです.
実は, 僕自身もこの科研費を獲得し, 150万円ほどの助成を受けて, 二年間の研究を行うことができました(どんな研究だったかは研究のカテゴリーへ).
この時も全国の施設を対象とした調査だったので, この科研費の存在は非常に心強かったです.
科研費を申請するには?
まず, 府省共通研究開発システム(e-rad)へ研究者として登録する必要があります. 手続きなどは所属機関がしてくれます.
府省共通研究開発システム(e-rad)とは?(公式Webサイトより)
府省共通研究開発システム(e-Rad)は、各府省等が所管する競争的資金制度を中心とした公募型の研究資金制度について、研究開発管理に係る手続きをオンライン化し、応募受付から実績報告等の一連の業務を支援するとともに、研究者への研究開発経費の不合理な重複や過度の集中を回避することを目的とした、府省横断的なシステムです。
e-Radは、公募型の研究資金制度を所管する関係9府省により運営しており、各府省の協力の下、文部科学省がシステムの開発及び運用を行っています。
というシステムです.
このe-radから科研費電子申請システムを利用するためのIDとパスワードも発行されるので, そのIDとパスワードを取得してから科研費へ応募します.
科研費に応募する際には, 研究計画やこれまでの業績, 必要な資金とその内訳などを細かく記した書類を作成する必要があり, その書類を専門家の方々が審査して, 研究費を助成するに値するかを決定します. 公的な資金を助成するわけですから, 審査が慎重に行われるのは当然ですよね.
こうして無事に審査に通過することができれば, 科研費の助成を受けることができ, 十分な資金を得た上で研究活動に臨むことができるようになるわけです.
その他の研究資金調達方法
では, 科研費の助成を受けられなかった場合, 少ない資金のみで研究をするしかないのでしょうか?
実は, 科研費以外にも研究助成を行っている施設や団体があります. 僕の所属している大学では, 研究費の助成の案内が大学に来ると, 事務局の方が教員全員にメールで教えてくれます(非常にありがたい).
また, TECH+というサイトでとても丁寧に研究費について紹介してくれていましたので, WebサイトのURLを貼っておきます.
僕の場合, 共同研究をしている民間の精神科病院が研究費を助成してくれていることもありました. この時は, その病院に所属する看護師さんと一緒に研究テーマを考え, 研究や学会発表, 論文投稿などを行いました.
以上のように, 科研費以外にも研究資金を調達する方法がありますので, お互いに研究費を獲得して, 素晴らしい研究ができるように頑張りましょう!
まとめ
今回は, 研究を行うために必要な研究資金について, どうして研究資金が必要なのか?どうやって資金を調達するのか?という部分に焦点を当てて記事を書いてみました. この記事を書くことで, 僕自身も改めて, 科研費や, その他の研究助成を活用して社会に貢献できるような研究をしていきたいと思いました.
この記事を読んでくれた人にとって, 少しでも有意義な内容になっていれば幸いです!
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