
みなさんは、普段しっかり眠れていますか。
布団に入ってもなかなか眠れない、夜中に何度も目が覚めてしまう、朝起きても疲れが取れた感じがしない。こうした悩みを抱えている人は、決して少なくありません。
今回の主な精神疾患と看護のテーマは「不眠症(不眠障害)」です。不眠症は身近な問題でありながら、「そのうち眠れるようになるだろう」「気のせいだろう」と見過ごされやすい側面もあります。しかし、不眠が続くことで心身に大きな影響を及ぼすこともあり、適切な理解と支援が重要になります。
不眠症とはどのような状態か
不眠症(不眠障害)は、診断基準上では「睡眠覚醒障害群」に分類されます。この睡眠覚醒障害群には、不眠症のほかにも、過眠障害やナルコレプシーなどが含まれています(これらについては、また別の機会に解説したいと思います)。
不眠症とは、単に「眠れない」という状態だけを指すわけではありません。睡眠の量や質が低下し、その結果として日常生活に支障が生じている状態を指します。
たとえば、
これらは睡眠の「量」に関わる障害です。一方で、十分な時間眠っているように見えるにもかかわらず、「眠った感じがしない」「熟睡した感覚がない」といった、睡眠の「質」に関する問題もあります。周囲から見ると眠れているように見えるため、本人のつらさが理解されにくいことも少なくありません。
不眠症が増えている背景
不眠症の背景には、さまざまな要因があります。
夜間でも活動ができてしまう社会構造の変化、スマートフォンやパソコンの普及、仕事や人間関係のストレス、生活リズムの乱れ、そして加齢などが影響していると考えられています。
特に、「眠らなければならない」という意識が強くなればなるほど、かえって緊張や不安が高まり、眠れなくなるという悪循環に陥ることもあります。
不眠症の治療について
不眠の治療と聞いて、まず思い浮かぶのは睡眠薬などの薬物療法ではないでしょうか。
睡眠薬に対して、「依存してしまうのではないか」「一度飲み始めたらやめられなくなるのではないか」と不安を感じる人も多いと思います。
しかし、現在使用されている睡眠薬は、以前に比べて依存性が少なく、安全性にも配慮されたものが主流です。主治医と相談しながら適切に使用すれば、症状の改善に合わせて徐々に減量し、最終的には内服しなくて済むケースも少なくありません。まずは「眠れる状態をつくる」ことが大切なのです。
薬物療法だけで十分な効果が得られない場合には、認知行動療法を併用することもあります。これは、「なぜ眠れないのか」「どのような考え方や行動が不眠を悪化させているのか」を一緒に振り返り、改善策を考えていく治療法です。
また、睡眠衛生指導も重要な治療の一つです。睡眠環境や生活習慣を整えることで、自然な眠りを促していきます。具体的な内容についてはスライドなどで示されることが多いですが、日常生活の中で無理なく取り入れられる工夫が中心となります。
これらを組み合わせながら、不眠症の治療は進められていきます。
不眠症に対する看護の役割
では、不眠症に対して看護師はどのような関わりを行うのでしょうか。
まず大切なのは、不眠の原因や誘因となっているものを丁寧にアセスメントすることです。身体的な要因だけでなく、心理的・社会的な要因にも目を向け、不眠につながっているものを一緒に整理していきます。
次に、睡眠衛生指導に沿って、本人の睡眠が促進されるように環境を整える支援を行います。無理に「こうしなければならない」と押しつけるのではなく、その人の生活スタイルに合わせた現実的な工夫を考えることが重要です。
また、不安や焦りといった感情が睡眠を妨げている場合も多いため、本人の思いを丁寧に聴くことも欠かせません。「眠れないつらさ」を言葉にできるだけでも、気持ちが軽くなることがあります。
その上で、本人の思いを手がかりに、不眠の原因を一緒に考え、解決策を共に模索していきます。さらに、日頃の睡眠状況を踏まえながら、睡眠薬の使用について医師や薬剤師と連携し、検討していくことも看護の重要な役割です。
「眠らなきゃ」という焦りに寄り添う
「眠らなきゃいけないのに眠れない」
「休みたいのに休めない」
このような状況は、本当につらいものです。不眠症の看護では、まずこのつらさに寄り添う姿勢が何より大切だと感じています。
以前、「眠らなきゃいけないのに、眠れない。どうしよう」と強い不安を抱えていた患者さんがいました。その方に対して、私は次のようにお伝えしました。
「焦って寝ようとしなくても大丈夫です。からだを横にして、静かに目を閉じているだけでも、からだ自体の休息にはなりますよ。」
この言葉をきっかけに、「眠らなければならない」というプレッシャーが少し和らぎ、結果的に眠れるようになったことがあります。
もちろん、すべての人に当てはまるわけではありません。しかし、不眠に悩む人にとって、「眠れない自分はダメだ」と思わなくていいと感じられることは、大きな支えになるのではないでしょうか。
不眠症の看護では、その人に合った解決策を一緒に探していく姿勢が大切です。眠れない夜を一人で抱え込まず、少しずつでも安心できる関わりを重ねていくことが、回復への一歩になると考えています。
