精神看護学のすすめ

An Invitation to Psychiatric Nursing

摂食障害とは?-症状・治療・看護のポイントをわかりやすく解説-

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今回は「摂食障害」について解説していきます。

摂食障害とは、食行動の異常や排泄行動の繰り返し、ボディイメージ(自分の体型や体重に対する認知)の障害、強いやせ願望などを特徴とし、その結果として心身の健康や日常生活に著しい支障が生じてしまう精神疾患です。単に「食べない」「食べ過ぎる」といった行動の問題ではなく、その背景には複雑な心理的・社会的要因が存在しています。

摂食障害は、大きく次の二つに分けられます。

  • 神経性無食欲症(神経性やせ症)
  • 神経性大食症

神経性無食欲症(神経性やせ症)の特徴

神経性無食欲症では、医学的に見て明らかに低体重であるにもかかわらず、「太ること」への強い恐怖を抱き、体重を増やそうとしません。また、自己評価が体型や体重に過度に左右されるという特徴があり、周囲から「やせている」と言われても、本人は「まだ太っている」「もっとやせなければならない」と感じてしまいます。

このようなボディイメージの歪みは、本人の意思や努力だけで修正できるものではありません。むしろ、「やせていること」が自分の価値や安心感を支える唯一の手段になっている場合もあり、非常に切実な心理状態が背景にあります。

 

神経性大食症の特徴

一方、神経性大食症では、食べることへの制御できない渇望から過食を繰り返します。短時間に大量の食物を摂取し、その後、体重増加を防ぐために自己誘発嘔吐や下剤の乱用などの不適切な代償行為を行うことが特徴です。

神経性大食症においても、体型や体重が自己評価に過剰な影響を与えており、「太ること」への恐怖が行動の根底にあります。過食と代償行為を繰り返すことで、強い自己嫌悪や罪悪感に陥り、さらに症状が悪化するという悪循環に陥ることも少なくありません。

これらの摂食障害は、精神科の代表的な診断基準である DSM-5 に明確な診断基準が示されています。

 

摂食障害の病因 ― 一つでは説明できない複雑さ

摂食障害の病因は、決して一つではありません。生物学的要因、心理的要因、社会的要因などが複雑に絡み合いながら発症すると考えられています。

特に、文化的・社会的背景の影響は大きいと言われています。やせていることが「美しい」「自己管理ができている」と評価されやすい社会風潮や、SNSなどを通じた他者との比較が、発症や症状の維持に影響を与えることもあります。

また、発症リスクを高める要因としては、完璧主義的な性格傾向、自己肯定感の低さ、過去の対人関係での傷つき体験、家族関係の問題などが挙げられます。ただし、どの要因がどの程度影響しているかは人それぞれ異なります。そのため、「なぜこの人が摂食障害になったのか」を理解するためには、その人自身のこれまでの経験や背景を丁寧に聴き取る姿勢が欠かせません。

 

摂食障害がもたらす影響

摂食障害では、身体的・精神的・社会的にさまざまな症状が現れます。低体重による循環器系への影響や電解質異常、過食や嘔吐による消化管障害など、身体的な合併症は命に関わることもあります。

精神的には、不安、抑うつ、強い自己否定感、対人関係の困難さなどを伴うことが多く、学校や仕事、人間関係にも大きな影響を及ぼします。摂食障害は、それだけ苦しく、時として死に至る可能性のある疾患であることを、私たちは正しく理解しておく必要があります。

 

摂食障害の治療

摂食障害の治療は、神経性無食欲症と神経性大食症でアプローチが異なりますが、いずれも精神療法を中心に、必要に応じて薬物療法を併用しながら進められます。外来治療で経過をみる場合もあれば、身体的リスクが高い場合には入院治療が必要となることもあります。

また、外来治療においては、自助グループとつながることも重要です。日本には NABA という摂食障害自助グループがあり、同じ悩みを抱える人同士が支え合う場となっています。

 

摂食障害における看護の役割

摂食障害の看護では、身体的ケアと精神的ケアの両面から関わることが求められます。

身体的ケアでは、まず生命の安全が最優先です。低栄養や電解質異常などによる突然死を防ぐため、医師や管理栄養士など多職種と連携しながら、全身状態の観察と管理を行います。

精神的ケアでは、温かく支持的な関わりを通して信頼関係を築いていくことが重要です。摂食行動の背景にある不安や葛藤に寄り添い、「理解しようとする姿勢」を持ち続けることが看護師には求められます。

特に食事の前後は不安が高まりやすいため、その気持ちを受け止めながら、代償行為が行われていないかを丁寧に観察します。もし代償行為が見られた場合でも、責めたり否定したりするのではなく、本人の苦しさに寄り添いながら思いを受け止める姿勢が大切です。

 

おわりに

今回は「摂食障害」について解説しました。まだまだ伝えきれていない側面も多くありますが、摂食障害が「意思の弱さ」や「わがまま」ではなく、心と身体の両方に深く関わる疾患であることが、少しでも伝わっていれば幸いです。

精神科に興味のある方、精神科で働き始めたばかりの方、そして看護学生さんにとって、本記事が理解の一助となれば嬉しく思います。

 

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