精神看護学のすすめ

An Invitation to Psychiatric Nursing

発達障害とは?-「ひとくくり」にしない理解のために-

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今回は「発達障害」についてお話しします。

発達障害という言葉は、日常の中でもよく耳にするようになりました。しかし実際には、その中身は非常に幅広く、「発達障害」と一言でまとめてしまうと、本来見えるはずの個々の特性や困りごとが見えにくくなってしまいます。

発達障害は、いくつかの異なる特性をもつ状態の総称です。代表的なものとして、知的障害、注意欠陥・多動症ADHD)、自閉スペクトラム症ASD)などが挙げられます。まずは、それぞれについて大まかに整理してみましょう。

知的障害について

知的障害は、知的機能と日常生活への適応能力の両方に困難がみられる状態です。一般的には、WAISやWISCといった知能検査で、IQがおおよそ70以下であることが一つの目安とされています。

ただし、知的障害は「IQの数値だけ」で決まるものではありません。どのような場面で、どの程度の支援が必要かといった、生活全体の中での適応状況が重視されます。重症度の分類や詳細な評価については、専門家による判断が必要となるため、ここでは割愛します。

治療や支援の中心は、薬物療法や医療的な処置というよりも、「その人が社会の中で生活しやすくなるための支援」です。日常生活の工夫、環境調整、周囲の理解などが重要であり、まさに看護や支援職の力が発揮される領域と言えるでしょう。

 

ADHD(注意欠陥・多動症)とASD自閉スペクトラム症

次に、ADHDASDについてです。

ADHDは、不注意、多動性、衝動性といった特性を中心とした発達特性です。集中が続きにくい、忘れ物が多い、じっとしていることが苦手などの特徴がみられることがあります。これらは「努力不足」や「性格の問題」と誤解されやすい部分でもあります。

ASDは、対人関係の特性やコミュニケーションの独特さ、こだわりの強さ、感覚の過敏さなどを特徴とします。人との距離感がつかみにくかったり、暗黙の了解が理解しにくかったりすることで、集団生活の中で困難を感じることがあります。

いずれも、スライドや書籍などで症状や治療について詳しくまとめられていることが多いため、ここでは概要にとどめます。

 

「育て方の問題」ではありません

発達障害について語るうえで、必ず伝えておきたいことがあります。

それは、発達障害は「子育ての仕方が悪かったから起こるもの」ではない、ということです。生まれ持った脳の特性であり、個性の一つです。

にもかかわらず、本人や家族が「自分のせいではないか」「もっと違う育て方をしていれば」と自分を責めてしまう場面は少なくありません。この誤解や自己責任論が、当事者や家族をさらに追い詰めてしまうことがあります。

だからこそ、周囲の正しい理解と適切なサポートが欠かせないのです。

 

看護・支援の視点からできること

発達障害のある人への看護や支援では、以下のような視点が重要になります。

まず、個人の特性に合わせた関わりです。同じ診断名であっても、困りごとや得意なことは人それぞれ異なります。「その人にとって何が難しく、何が助けになるのか」を丁寧に見ていく姿勢が求められます。

次に、家族や学校、職場など周囲との関係調整です。本人の努力だけで環境に適応することには限界があります。周囲が特性を理解し、少し関わり方を変えるだけで、生活のしやすさが大きく変わることもあります。

さらに、感情のコントロールや社会生活に必要なスキルの支援も重要です。失敗体験が積み重なると、自信を失ったり、感情のコントロールが難しくなったりすることがあります。安心して練習できる場をつくることが支援につながります。

そして、利用できる社会資源の情報提供です。福祉サービス、医療機関、相談窓口など、支援につながる選択肢を知るだけでも、本人や家族の安心感は大きく変わります。

 

理想と現実のあいだで

本人のスキルを高めつつ、周囲が理解し支えてくれる環境を整える。言葉にすると理想的ですが、現実はそう簡単ではありません。

それでも、早い段階で本人の特性に気づき、必要な支援につながることで、「何も支援がない状態」と比べれば、生活のしやすさは大きく変わります。困難が完全になくならなくても、「対処できる」「相談できる」という選択肢があること自体が、大きな支えになります。

 

大人になってから気づく発達障害

最近では、大人になってから発達障害だったことが分かる人も増えています。

「どうしてうまくいかないのだろう」

「どうして周りと同じようにできないのだろう」

そうした長年の疑問が、特性として理解できたとき、少し肩の力が抜ける人もいます。一方で、これまでのつらい経験を思い返し、複雑な感情を抱く人も少なくありません。

 

一人で抱え込まないために

「どうしてうちの子は」

「どうして自分は」

そんな思いを抱えている方へ、一つだけ伝えたいことがあります。

一人で抱え込まず、周りの人や専門家に相談してみてください。すぐに解決に至らなくても、考え方のヒントや、次につながる選択肢が見つかることがあります。

この文章も、そのための情報の一つになれていれば幸いです。

 

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