精神看護学のすすめ

An Invitation to Psychiatric Nursing

書籍紹介「生まれ変わっても, また同じ家族でいようね!」を読んで

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季節は少しずつ秋に近づき、朝晩は涼しさを感じるようになってきましたね。
秋といえば「読書の秋」。みなさんは、読書はお好きでしょうか。

私は職業柄ということもあり、本や論文を読むことが比較的好きです。自分の研究や論文執筆に引用するための文献を読むこともあれば、まったく専門外のジャンルの本を手に取ることもあります。

また、所属している学会などから、新刊書籍について「書評」を依頼されることもあります。書評とは、指定された書籍を読み、その内容や魅力を簡潔に紹介する仕事です。
論文投稿のように査読があるわけではないため、「この内容で本当に大丈夫だろうか」と毎回少し不安になりながら書いていますが、幸いこれまで大きな修正や指摘を受けたことはありません。おそらく、自由に感じたままを書いてよいものなのだろう、と自分なりに解釈しています。

さて今回は、仕事としての書評ではなく、個人的に読んで深く心を揺さぶられた一冊について、感想を残しておきたいと思い、このブログで紹介することにしました。

今回ご紹介するのは、この一冊です。

著:有馬美樹
生まれ変わっても、また同じ家族でいようね!

生まれ変わっても、また同じ家族でいようね!

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本書は、筋ジストロフィーという難病を抱えた兄と、その家族の闘病生活、そして家族が抱え続けた葛藤を、妹である著者の視点から描いたノンフィクションです。

筋ジストロフィーという疾患について

筋ジストロフィーは、指定難病(113)にも指定されている遺伝性疾患です。
骨格筋の壊死や再生を主な病変とし、筋力低下や運動機能障害が進行していく病気です。原因は、筋肉の機能維持に必要なタンパク質の設計図となる遺伝子の変異によるもので、現時点では根本的な治療法は確立されていません。

私はこれまで臨床の現場で働いてきましたが、筋ジストロフィーの患者さんと直接関わった経験はありません。そのため、この本を通して知った闘病生活や家族の苦悩は、私にとって非常に重く、そして新鮮なものでした。

本書では、兄が診断を受けるまでの経緯、診断後の長い闘病生活、そして家族一人ひとりが抱えてきた思いが、丁寧に、誠実に描かれています。
難病を抱える当事者や家族、支援者の方々にとっては、共感できる場面が数多くあるのではないでしょうか。また、筋ジストロフィーについてほとんど知らない人にこそ、ぜひ手に取ってほしい一冊だと感じました。

 

心に残った二つの場面

本の内容をすべて紹介してしまうと、読む楽しみが失われてしまうため、ここでは私自身が特に心に残った二つの場面について、感想を述べたいと思います。

①妹が兄についた「優しい嘘」

一つ目は、妹である著者が、病気の兄に嘘をついてしまう場面です。

つらい闘病生活の中で、兄は妹にこう問いかけます。
「いつになったら、この病気は治るの?」

筋ジストロフィーには根本的な治療法がありません。それを理解していながら、妹は咄嗟に「20歳になったら治るって、先生が言ってたよ」と答えてしまいます。

兄はその言葉を信じ、20歳の誕生日を迎えます。しかし、病気が治ることはありません。やがて兄は、「いつ治るのか」と尋ねることもなくなったそうです。

この嘘は、「少しでも安心させたい」という純粋な思いから生まれたものでした。それでも著者は、今もなおその嘘に対する罪悪感を抱えていると綴っています。

もし私が同じ立場だったとしても、「この病気には治療法がない」と本人に正面から伝えることは、きっとできなかったと思います。しかも、著者が嘘をついたのは、まだ未成年の頃でした。兄を想う気持ちと、嘘をついてしまった後ろめたさ。その狭間で揺れ続けた妹の心情を思うと、胸が締め付けられるようでした。

 

② 兄が旅立ちを迎える瞬間

二つ目は、兄が長い闘病生活の末、旅立ちを迎える場面です。

症状の悪化が見られていた中で、急変が起こったのは、兄の誕生日でした。家族に見守られながら迎えた最期の瞬間が、淡々と、しかし非常にリアルな筆致で描かれています。その臨場感は、まるでその場に立ち会っているかのようでした。

実はこの日は、兄が母と「ある約束」をしていた日でもありました。
兄はその約束を、見事に守ったのです。

兄が何歳まで生き抜いたのか。
母と交わした約束とは何だったのか。
そこに至るまで、どのような家族の物語があったのか。

それらは、ぜひ本書を通して知ってほしいと思います。

なお、本書のタイトル『生まれ変わっても、また同じ家族でいようね!』は、兄が旅立つ前日と旅立った後に、著者が見た夢の中で、兄が語った言葉だそうです。そのエピソードもまた、深く心に残りました。

 

おわりに

私は、もともと臨床現場で働く精神科看護師でした。現在は看護系大学の教員として研究に携わっていますが、データや理論だけを追いかける「頭でっかちな研究者」にならないことを常に意識しています。そのために大切なのが、当事者や家族の思いに触れることです。

本書は、まさにその大切さを改めて教えてくれる一冊でした。

当事者や家族が語る実体験には、何ものにも代えがたい重みがあります。同時に、現代医療の限界を突きつけられ、切ない気持ちになる場面も少なくありませんでした。それでも、この本を読み終えたとき、私は「看護職者として、教育者として、自分に何ができるのか」を、改めて考えさせられました。

とても良い本と出会えたと、心から思います。
興味のある方は、ぜひ手に取って読んでみてください。

 

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